学生が良かれと思ってまとめたのに、実はそれがNGだということがよくあります。
大学のレポートやNHKのニュースとは違うということです。
「私がどう思った」ということは基本的にレポートには書きませんね。
あくまで、実験の結果や調査をしたことを淡々と書くのが前提です。
あなたがどう思ったかは聞いていない、というのが大半です。(もちろん考察は自分の考えを書きますね)
ジャーナリストの池上彰さんも言われていました。NHKを辞めたあと、民放にまだ慣れていなかった頃の話です。
「池上さん、このニュースについて、どう考えますか」と聞かれて、私は言葉に詰まってしまったのです。
出典:伝える仕事 著 池上彰
というのもNHK時代、記者としてもキャスターとしても「自分の意見を言ってはいけない」と徹底的に教育を受けていたからです。ここがNHKと民放の違いです。
シーンが浮かぶように、気持ちが伝わるように話す
お笑いなどでも、話のうまい人というのは、聞いている人がその時の情景を思い浮かべることができるような話かたをします。
もちろん、面白おかしく話しましょう、という話ではありません。
話をきれいにまとめると、レポートを聞いているようで、まったく印象に残らないし、気持ちが伝わってこない話になってしまいます。
伝え方の一つに、具体的に話すということがあります。
「友達と遊びにいったときの話です。急に雨が降ってきました。しかし、傘を持っていなくて困りました」
という文章をもう少し、具体的にしてみます。
「友達と二人で銀座に遊びに行ったときの話です。急にどしゃぶりの雨が降ってきました。しかし、傘を持っていなくて困りました」
どうでしょう。内容はしょうもない文章ですが、イメージがつくのではないでしょうか。
銀座はご存じの通り、雨宿りできるようなところが少ない街です。
一本奥に入ったり、建物に入ると飲食店はあるにはあるのですが、店舗数に比べてカフェなどはそれほど多くなく、浅草のように屋根のあるような通りがありません。
そして、ただ雨が降ってきたというより、どしゃぶりの雨の方がどんなイメージか伝わります。
みなさんがよくやってしまう話し方として、きれいに情報をそぎ落として経験を話されるとイメージがつきにくくなってしまうのです。
わかりやすい話をするためには「会話の公理」がある
会話をスムーズに進めるための、会話の協調の原則についてグライス(Grice,1975)は次の4つをあげました。
出典:わかりやすさとコミュニケーションの心理学 著 海保博之[編]
- 量の公理:必要な情報を過不足のないように提供し、必要以上のことはいわない。
- 質の公理:自分が真(真実)だと思うようなことを述べ、偽(嘘)だと思うことはいわない。
- 関係の公理:(話題に)関係のあることを述べ、無関係なことはいわない。
- 様式の公理:不明確な表現やあいまいな表現にせず、簡潔に、かつ順序立てて話す。
50年ほど前に書かれた内容ではありますが、十分に今でも通用する内容です。
公理の4に「簡潔に」とありますが、上にのべたように相手にあえて伝えた方がイメージが伝わることがあります。
普段の会話でも、話している内容がわからない人というのは、この4つの公理から逸脱しているときが多いです。
面接は友達との会話ではありませんので、この4つを少し知っておくとわかりやすい話ができます。
面接で嘘は言わないと思いますが、公理4の「順序だてて」ということも結構大事です。
例えば、話す順番が時系列(起こった順)になっているとわかりやすいけども、そこで時間の前後があったりすると聞いている側はわかりにくくなります。「え?高校の時の話?大学の時の話?」のようにですね。
人は話を聞きながら、順番などを予測しながら相手の話を聞くからです。
まとめ
「ガクチカ」の話し方について少しだけお伝えしました。
どんなテーマを選ぶといいのか、など、伝えたいことはたくさんありますが、おいおいと思います。
詳しく言うのか、と言っても、ダラダラ話されると今度は長すぎて、聞いている側がわからなくなります。
エピソードを話すのであれば、そのある部分だけを「輪郭をはっきりさせて」切り出すようにします。
「輪郭をはっきりさせて」ということが、「イメージのつくように具体的に」必要なところだけ話すということです。