大手企業、中小企業での会社員を約10年、それと自分での起業して11年以上行ってきた経験からお伝えします。
また、10年にわたる大学でのキャリアデザインの講義、企業内での採用活動もたずさわってきました。
その中で、本当は自分にあっていないのに、「あこがれ」で選んで失敗する人も見てきました。
ここでは本来の定義(※)の資本金や売り上げではなく、従業員数を切り口にして3つに企業規模を分類します。
それぞれの規模に応じた企業では、働き方や給料などにどのような差があるのかについてお伝えいたします。
(※中小企業、小企業には業種や資本金、従業員数などで定義があります。統計の都合上、変化する場合は注釈をつけます。)
1.大手企業(1000人規模)
2.中小企業(100人規模)
3.個人企業(10人規模)
この区分けにする理由は、組織が1000人の規模でも、5万人の規模でも従業員にとっては働き方は変わらないためです。規模が大きくなると、部署が異なると別会社くらい異なる場合もあります。
一番、差がでる比較として10人、100人、1000人と区分けをしています。
給与の比較→大手企業の方が中小企業よりも給与が高い傾向にある
まず、給料の面で比較すると以下のような形になります。
この図における定義 大企業・・1000人以上/中企業・・100~999人/小企業・・10~99人
男性は特に、年齢が高くなるほど規模による給与差が大きくなります。ピークの比較で大企業は小企業に比べて最大で約37%の増です。
女性は男性ほどの差はなく、ピークの比較で大企業は小企業に比べて最大で約19%の増です。
このことからも、企業規模が大きいほど給料が高くなることが確認できます。
男女差の方が大きく、大企業の男性のピークは、大企業の女性のピークの55%増となっています。
補足 500(千円)→50万円 例 409.9→40.99万円 483.8→48.38万円
(厚生労働省 令和4年賃金構造基本統計調査より)
ただ、実際はこのような傾向があるとはいえ、中小企業や個人企業であっても大手企業よりも給与が高い場合もあります。
四季報などで平均給与を調べることもできますが、多くの場合、全従業員の平均がとられてしまっており実態とは異なることも多いので内部の人に聞かないと実際のところはわからないことも多く、それらの資料は参考程度にとどめて使うのがいいです。
給与や内部等の実態として参考になる本として、
「いい会社」はどこにある? 自分だけの「最高の職場」が見つかる9つの視点 渡邉正祐 著
があります。分厚い本ですが、自分の興味のある業界等について調べてみると参考になります。
1.大手企業(1000人~規模)の特徴
大手企業の従業員から見た場合の特徴は次のような形になります。
・部署が異なれば会社が違うくらい離れている(部署が異なると全く知らない人も多い)
・1つの部署で100人規模も普通にある(その中でさらに分かれている)
・役員や社長は雲の上の人でなかなか直接会うことは難しいことが多い
・仕事の全体像が見えにくく、会社内における自分の貢献度が見えにくい
・会社における自分の存在は1/1000になるので意見は通りにくい
・多くが年功序列(長く働いた人が給料をもらえる形)
・有名企業であることが多く、賞与(ボーナス)も安定してもらえる可能性が高い
・自分が社長や役員になるのは結構な競争(同期が多いため)
・メンバーシップ型雇用で、ジョブローテーション(配置換え)などもあることが多い
2.中小企業(100人規模)の特徴
中小企業の従業員から見た場合の特徴は次のような形になります。
・社員の顔と名前は大体全員把握できる
・1つの部署は10~20人程度でチームになっている
・役員や社長も割と近く、直接話したりする機会も多い
・仕事の全体像も把握ができ、会社内における自分の貢献度も見える
・会社における自分の存在は1/100になるので意見は少し通る
・できて10年以内のベンチャー企業なら給与は年功序列でないことが多い
・できて30年以上経っている企業なら給与は年功序列の可能性が高い
・知られていない会社であり、業績によって賞与(ボーナス)などは大きく変動することもある
・自分が社長や役員になるのは大手企業ほどの競争はなく、一つ頭抜ければなることのできる可能性はある
・職務を決めて採用していることも多く、ジョブ型雇用の一面をもっていることも多い。ジョブローテーションはないことが大半
3.個人企業(10人規模)の特徴
個人企業の従業員から見た場合の特徴は次のような形になります。
・社員の顔と名前は全員把握できるどころか距離が近い
・部署というより、担当という形で一人で何役もやる(開発とテストの両方を担当するなど)
・役員や社長との距離も近すぎるので相性が合わないとやっていけない
・会社内における自分の貢献度も見えるというか、稼がないとつぶれる
・会社における自分の存在は1/10になるのでとても重要
・できて10年以内のベンチャー企業なら給与は年功序列ではないことが多い
・できて30年以上経っているなら規模はあまり今後も期待できないが、自分次第で大きくできる可能性もある
・業績によって、賞与だけでなく給与も変動する可能性もある
企業の選び方
自分が働く業種を考えると同時に、その会社の規模を見ることで自分の働き方も見えてきます。
・1000人以上の会社は規模が大きい分、安定しているけれども自由になる部分は少ない
・100人くらいは比較的安定しているけども、老舗だとすでに固まってしまっている場合もあるが、社歴が20年以内なら自由度が大きい場合もある
・10人くらいならば自分たち次第で将来性があるとはいえるが、社長や役員との相性が重要
自分がどういうスタイルで働くことが一番力を発揮できるかを考えてみてください。
普段、学生と接していても感じることとして、多くの人が安定した企業を求めることは事実なのですが、それが本当に自分にとっての正解なのかどうかはよく考えてみる必要があります。
大手企業やベンチャーへの「あこがれ」が必ずしも自分の正解ではない場合も多いことに注意してください。「あこがれ」と「自分の好み」はイコールではないことがよくあります。