上場企業の場合、平均勤続年数などが開示されていることもありますので、人の出入りが多いのか少ないのかなどを判断することはできるかと思います。
ただ、業種によって、もともと人の出入りが多い業種と、少ない業種があります。
自分が進む業種、業界は決めていたとしても、聞いた時の離職率が高いのか低いのかを知っておくことは、一つの基準になるかと思います。
調べる年度によって多少、順位は変動しますが、今回は2015年のデータ(出典 若年者の早期離職 初見康行 著)を使用します。
離職率の高い業種トップ5
新卒大学生の産業別、3年後の離職率です。
1位 宿泊業・飲食サービス業 50.5%
2位 生活関連サービス業・娯楽業※1 47.9%
3位 教育・学習支援業 47.3%
4位 医療・福祉 38.4%
5位 小売業 37.5%
※1 生活関連サービス業とは、日常生活に関わるサービスを提供する事業です。具体的には美容室、理容室、クリーニング、旅行代理店、エステなどを意味します。娯楽業は、映画、音楽、演劇などです。
実は、このトップ3つはほぼ数値が変わりませんが、4位以下の他の業種を10%近く大きく離しています。
この上位の3つの業種は、3年後、つまり4年目を迎えるまでに、2人に1人が退職、転職等をしていることになります。
もし、このトップ3の業界を考えているのであれば、会社説明会等で聞いた離職率は50%を基準として聞くといいことになります。
皆さんもよく聞いていると思いますが、全大学生の全業種の離職率がが約30%ですので、それを基準としてはならないということです。
新卒離職率トップ3の業種に共通していることは何だと思いますか?
それは、自社スキルにあまり依存していない業種ということです。
ホテル業界にしても、飲食にしても、美容室などにしても、自分のスキルが他の業界に行ってもそのまま通用する業種です。
通常の仕事というのは、多くの場合、その自社だけにしか通用しない仕事のやり方というものがあります。
新入社員が初めに苦労する理由は、その会社独自のルール、独自のやり方などを身に着ける必要があるからです。
離職率の低い業種トップ5
離職率の低い仕事、やはりその業界、その会社でしか通用しないスキルを多く必要とする業種になっています。
1位 電気・ガス・熱供給・水道業 8.5%
2位 鉱業・採石業・砂利採取業 12.4%
3位 製造業※2 18.7%
4位 金融・保険業 21.0%
5位 複合サービス事業※3 23.2%
※2 製造業とは、メーカーのことです。例えば自動車メーカーとか、電機メーカーなど、いわゆるモノづくり事業です。
※3 複合サービス事業とは、郵便局(郵便事業と、保険事業など)や、農業協同組合(経営指導、購買事業など)のように複数の大分類にわたる各種サービスを提供する事業のことです。
これらの業種は割と理系が多いように思います。
2位の鉱業については、事業人口的にもかなり少ないですので、本当は入れなくてもよかったかなと思いましたが一応いれておきます。
これらの業界の説明会で、ウチの新卒離職率は20%を切っています、ということを言っていても、それは自慢になりません。
もともと、この手の技術系の仕事や、金融などは低いのが当然だからです。
若手の時点での離職率が低いということは何を意味するかと言えば、自分の身に着けたスキルが、他社にいっても通用しにくいということです。転職も視野にいれるためには、自ら、他社で通用するようにどうすればいいのか、考えたうえで仕事をする必要があるということです。
離職を思いとどまる理由
一つおまけで、「離職を思いとどまる理由」についても同じ書籍に載っていましたのでご紹介します。
1位 辞めると生活ができないから 45.1%
2位 希望の転職先が見つからなったから 25.5%
3位 職場の人間関係が良好だから 24.2%
このような結果ですが、実質、3位のところだけですね。具体的な理由になるのは。
この「人間関係が良好かどうか」ということが非常に大切だといえます。
私も新卒の社会人と話していても、「社員の人がすごくいい人たちが多い」と言っている人は、なんだかんだ言っても辞めないわけです。とても仕事が大変だとしても、もう、この仕事が終わったらやめる、と言っていてもです。
逆に、辞めてしまったり、メンタルを病むなりして辞めざる得なくなる人は、会社内に相談できる人がいないことが多いように思います。
私が会社説明会などに行った学生から必ず聞くことの一つに、
「社員の人はどうだった?」
というのがあります。
この質問の答え次第で、その学生にとってその職場が合うのか合わないのかがわかります。
福利厚生や給料は二の次なんです。
どれだけ、社会的に認められている一流企業であっても、その就職する人にとって、その組織に居場所があるかどうか。
なじむことができるかどうか。
一番大切なことはこの点です。
だから、めんどくさがらずに、インターンや、会社説明会には足を何社も運びなさい、ということを伝えています。