就活でも、ビジネスシーンにおいてもですが、「何を言っているのかよくわからない」と思われてしまう人がいます。
就活の場合だと、直接「何を言っているかわからない」とはいわず、普通に減点するか(コミュニケーション能力が低いということで)、もしくは、聞き返したりしてくれるかもしれません。
私自身、幼稚園児から大学生への個別指導を毎日数時間、数百人、保護者の対応も同時に11年にわたり行ってきました。また、10年前より大学での講義を100人に毎年指導を行っております。個別に話す場合と、集団に話す場合とでは当然話し方も異なります。
面接やビジネスシーンは、どちらかといえば、個別に話すシーンに近いです。
私が特に意識をしてきたことは、「わかりやすいかどうか」です。
相手によって変える必要がありますが、説明の下手な人、説明の上手い人は何が違うのでしょうか。
相手に正しく伝えるには何に注意して話せばいいのかについてお伝えいたします。
話がわかりにい人のポイントは、早口、主語抜け、話量の過多、相手を無視、専門用語
そもそも、話がわかりやすい人の話というのは、話の飛躍がないとか、相手の理解を確認しながら進めているといったことを普通に行っています。少人数であれば、話を聞いている人からも質問があったりするために確認することができます。
つまり対話ですね。
対話であれば、会話のキャッチボールですので、お互いがお互いの理解を確認しながら進めることができます。
ただ、面接や上司が部下に話をするときなどは、ある特殊な空間だと言えます。
面接官は、学生の話がわからないと思っても、わざわざ聞き返してくれない場合もありますし、学生も面接官の話がわからなくても、聞き返せないということは多々あります。
人と人の会話である以上、必ず「エラー」は生じる可能性はあるのですが、なるべく「情報伝達のエラー」はなくしたいのが対話です。
では、どういう話し方をする人が「エラー」を生み出しやすいのかについてお話しいたします。
早口は聞き取るのが難しい
せっかちな人に多いですが、話が早口になることで、何を言っているかわからないケースがあります。
早口になる理由として、性格的な場合や、緊張してしまっている場合などがあります。
せっかちな人は、早く内容を伝えたいと思うあまりに早口になっています。
面接などで緊張して早口になる場合は、「早く終わって欲しい」という心理があるのかもしれません。
この早口の人は、自分はわかっているので、相手にも伝わっていると思っています。
ただ、早口の人はその自覚がないので、なかなか治りません。
また、ある意味、タチの悪いことに、この早口の人に周りが慣れてくれることで、だんだん、周りが聞き取れるようになるので、早口の人はずっと治らないということになります。
なぜタチが悪いかといえば、同じ組織内であればあまり問題はないのですが、外部の人と話したり、初めて会った人と話したりした時に、その人の言ったことはほとんど伝わっていないというようなことになりえるからです。
その早口な人が社長ならば、まだいいです。
今、書いたように周りが慣れてくれます。(周りが苦労するので、治した方が当然いいです)
早口の人が学生の場合も友達や自分の家族はその早口に慣れてくれるので、その悪いクセを持ったまま面接を受けに行くと、「何を言っているかわからない」と思われてしまいます。
アナウンサーの早口とは意味が違います。アナウンサーの早口は、きちんと話すのでそれでも聴き取れます。普通のせっかちな人が早口になると、音がつぶれます。音がつぶれていても、話している本人だけはきちんと聴こえているつもりになってしまいます。
主語が抜けていることが多い
話している本人は相手にも伝わっていると思ってしまうあまり、「何が」「誰が」という主語にあたる部分を抜かして話すことが多いです。
相手が質問してくれる人であれば、「『誰が』ですか、『何が』ですか」と話してくれることで、補うこともできます。
ところが、相手が話しているところをさえぎるというのは、とても勇気のいることです。
そのため、よくわからなくても、そのまま聞き手は「聞かない」場合も多いです。
面接の場合などでも、「相手に話をさせよう」と思って面接官も聞いている場合もありますので、わざわざ聞いてくれないことも多いでしょう。
ましてや上司が部下に話している場合であれば、なおさら聞くことはできないです。
「もっと早く言え」などと言われたりするのではないか、また、「自分の理解が悪いからではないか」と考えてしまうからです。
また、途中で話も主語も変わっているようなこともあります。そうすると、聞いている側は全く違う風にとってしまっていることもありえます。
これも、話している側が気づくことがとても難しいです。
なぜなら、話している側は、自分の頭の中にあることを話しており、それが相手にも伝わっていると錯覚してしまいやすいからです。
最後にも書きましたが、これについては、模擬面接を行ったりするときに、スマホを使ってカメラを回しておくと、自分の話がわかりやすいか、わかりにくいかを確認できます。
気を付ける点としては、「暗記してきたこと」を話している時には、意味がありません。
なぜならば、そういった「暗記してきたこと」は一度文章におこしているので、そういうミスは起こりにくいからです。
そもそも、「暗記してきたこと」を話すのは、面接官側としては避けて欲しいと思いながらも、それが混ざるのは仕方ないな、と思いながら聞いています。
そのため、相手が想定していないだろうな、と思うことを面接官は質問します。「暗記テスト」ではないので、そんなことよりも、あなたは何をやってきたかを聞きたいわけです。
話量の過多
話量の過多というのは、話す人が一言で話す量のことです。エントリーシートなど、文章にしていれば気づけることです。通常、一文の長さは40文字程度以下にしたりします。それによって、読みやすい文章が作られます。
話す場合は、一文かどうか、ということではないのですが、字数制限はありませんので、言いたいことが多いと量が多くなってしまうことが多いのです。
もう少し言うと、話量が多くても大丈夫なものと、ダメなものがあります。
ストーリー的なものであれば、話す言葉が多くても、相手は聞き取れます。
なぜなら、順を追っていっている話で、その全部を覚える必要はなく、また流れがわかるので、割と頭にも残りやすいです。
聞いている側が難しくなるのは、一回の話で複数の話をするときです。
誰しも経験はあると思いますが、例えば学校などで先生が、
「〇〇が終わった人は、前に〇〇を提出して、半分以上終わっていない人は、居残りするように。ただ、16時過ぎたら教室を出て自習室に移動して18時までに終わらすこと。ただ、課題テストが平均点だったものは直しをして職員室までにもってくること」
これを、文章に書いてあれば、別に誰も迷うことはないのですが、話し言葉でこれをやられると、全部、一回でパンっと入る人もいます。学校の先生は毎回同じことを言っているつもりなので、相手の頭に入らないとは思っていません。
でも、「言葉で言われた」ことを、最初の部分の「〇〇が終わった人は〇〇を提出しろ」しか頭に入らない人もいるわけです。
これは人によって異なります。一気に話したいことがあるから話しても良いものと、覚えていないと、何か不利になってしまうようなことの場合は、話をその都度切る必要があるものがあります。
この一回で聞くことのできる話の量などを「ワーキングメモリ」という表現をしたりすることもあります。
この容量は、本当に人によって異なります。
特に難しいのは、話し手の「ワーキングメモリ」が多いと、聞いている側も同じくらい聞く力があるだろう、と思って話してしまうことがあります。そのため、話量が多くなってしまいがちです。
これも、話し手は気づけないのです。
ある程度で話す量を切って、そこで話し合いをするようにしていくと、話し合いがしやすくなります。
文章と同じで40字以内でとまでは言いませんが、文章を区切って相手の理解を確認して相手に話を振る方がいいでしょう。
せっかく、自分の伝えたいことがあるのに、聞いている側の「ワーキングメモリ」オーバーによって聞いてもらえなければ、面接などではもったいないことになります。
もっとも、それを避けるためには、一番言いたいことは、「一番最初」か「一番最後」に入れると、相手の印象には残りやすくなります。
相手を無視
相手を無視というのは、相手を見ずに話してしまう場合です。相手の理解や状況を観察しながら話さないと、相手には話は伝わりません。
100人以上の集団に講演などで話す時も、伝わっているときと、伝わっていないときの、聞いている側の表情は違います。
面接であれば、面接官がどのように話を聞いているか、伝わっているのか、興味をもってもらえているのか、というようなことで判断できます。ただ、相手が聞いているかどうか関係なく、自分の覚えてきたことや、伝えたいことだけを伝えようとしても、それは相手には当然伝わりません。
面接官はそれこそ、毎日朝から何十人と面接をしてきているわけです。
面接官の状況を見ずに話している学生になど、どれだけ魅力的な話をしていても興味は持たないでしょう。
専門用語
相手が誰か、どういう背景をもっている人なのかを意識せずに話してしまうと、全く伝わらなくなります。
例えば、面接の初期段階の場合は、人事関係の人が出てくることもあります。
そうすると、その業界の概要は知っていても、実務についてはそれほど詳しくないということもあり得ます。
わかりやすく言えば、その人事の人に自分のやってきた研究内容や、なんらかの専門分野の話をしても伝わらないということです。
学生側は企業の人だから、きっとみんなその業界の専門分野に詳しいのだろう、などと思ってしまうことがありますが、案外、そうではないことも多いです。
現場の担当者が面接に出てくることもありますので、そういう場合は、その分野について話すこともできると思います。そこでは、相手が逆に自分の分野の専門分野を使って質問してくることもあります。
ただ、業界で使われている言葉と、自分の把握している言葉が言い方が異なったりすることもありますので、その点は注意する必要があります。
これは、営業や技術などの分野でも同じようにあります。
聞いている人がどのレベルの用語ならば通じる人なのか、ある程度背景を知った上で話すと話しやすくなります。
また、相手が質問してくる内容からも、その人の理解を確認することができます。
面接の場合、相手が、その用語を使って話して来る場合や、突っ込んでくる場合は通じる可能性はありますが、もっと、概要的なことや、心情的なことを聞いてくる場合は、その分野の専門家ではないことが多いです。
自分の対策は、動画を撮ると結構わかる
模擬面接を行う場合に、自分の状況をスマホなどで動画を撮ってみると何か気づくことがあるかもしれません。
「無くて七癖(なくてななくせ)」
誰にでも癖がないように見える人でも、良くみると七つくらいは癖があるものだ、という言葉です。
セリフをかんだとか、そういうことはどうでもいいのです。アナウンサーの試験ではありませんので。
自分が質疑に対して、どういう答え方をしているのかを確認すると、案外、「わかりにくい話し方をしているな」という何かに気づけるかもしれません。
自分で自分を見るということは普段はなかなかないことですので、一度見てみることをおすすめします。
「わかりやすい」話し方ができるかどうかは、営業においても、エンジニアにおいても、様々な分野で重宝されます。
就活だけで使う能力ではありません。